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横浜地方裁判所 昭和42年(行ウ)31号 判決 1969年9月30日

原告 葉山正吉

被告 鎌倉市長

訴訟代理人 小林定人 外五名

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事  実 <省略>

理由

一、被告は、原告に対し原告主張の日に本件換地処分をなし、その頃原告に通知したことおよび本件換地処分は、原告主張の内容の鎌倉市都市計画事弐岡本土地区画整理事業施行規則第二〇条第一項により本件土地の地積を公簿面積の二一四・八七平方メートルと確定して行なわれたことは当事者間に争いない。

二、次に原告訴訟代理人は本件土地の実測面積は右公簿上の面積を越える旨主張し、原告本人尋問の結果中には右主張に符合する供述部分があるが、原告本人尋問の結果によれば、原告は本件土地を昭和三四年九月に売買によつて所有権を取得したが、右売買契約締結前に本件土地を実測することなく売主から図面を示されて約九五坪(三一四・〇四平方メートル)ある旨説明を受けたに過ぎず、後日原告は測量士に本件土地の実測図を作成させたところ、その測量の結果について本件土地の北側および東側の隣地の各所有者と境界の争いが生じ、現在なお右境界確定請求訴訟が係属中であることが認められ、以上の事実に照し容易に措信できず、他にこれを認めるにたる証拠はない。

三、原告訴訟代理人は、土地区画整理法第七二条は従前の宅地の面積を確定する方法として実測によるべきである旨定めていると主張するが、右条文は土地区画整理事業の準備または施行のために測量または調査をする必要がある場合には、他人の占有する土地に立ち入る等することができる旨定めたものであつて、実測によつて従前の宅地の面積を確定すべきことを定めているものではなく、確定方法として施行規則等により一定期日の公簿上の面積によることは違法とは言えない。よつて、原告の右主張も理由がない。

四、さらに、原告訴訟代理人は、土地の公簿面積が実測面積より少ない場合でも、その不足部分の土地所有権の取得を第三者に対抗し得ることを理由として公簿面積を基準としてなした本件換地は違法である旨主張するが、すでに判断したように、本件土地の実測面積が公簿面積を超えていると認められないばかりでなく、施行規則にしたがつて従前の宅地の面積を一定の基準日の公簿面積によつて確定することは違法とは言えないのであるから、原告の右主張も失当である。

よつて原告の本訴請求はすべて理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 石橋三二 藤原康志 猪瀬俊雄)

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